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話は聞きましょう
吉本じゃないけど、後輩起業家が「うちのビジネスモデルを勘違いしてるあそこ」とか言ってたり、「勝ち組になったところしか投資してないよ」とか言われている現状に対して、俺達が正義みたいな感じでアピールし続けるのはちょっと違うなと思うので、まず投資家はしっかりと話しを聞くという姿勢が大事だと私は思うし、私が投資家ならまずは聞く。
なぜなら、類型化して自分の勝手な想像だけで物事を判断することこそ愚かだからだ。そして、拙いつてに聞いてビジネスモデルを判断するのもおかしい。DDする場合はその業界の深いところまで知っている人間(異業種含め)までヒアリングしなければいけないし、その筋の学者に聞いたり、論文を読んだりする必要があるが、そこまでのDDをやっている人は少ないだろう。儲かるかどうかはつじつま合わせだし、結果だけしか証明できないので鉛筆を舐めればいいが、実在するかどうかは調べ尽くさないとわからない。一分でわからせないとだめだと言うが、一分でわかるものなんて、すぐに誰でも真似してくるようなものだ。一言では言えない深い領域こそが新しい種だろう。SaaSが儲かる云々はバックテストなので、結果そうだったという話で方向性としての結論だと思うほうが良いだろう。ただ、一年前の行動が一年後の結果に現れるというのは、そのとおりだと思うので、それを信じて長期的な投資をしていく必要がある。
世界と戦うなら、そういうレベルでやらないけない。正直世界と伍する戦いができていないのはそういう視野の狭さにあるのではないか、とつくづく思うし、強豪だと思うと潰しにかかるのも良くない。それは投資家がやるべきことではなく、起業家が営業力でやるべきことだ。
上記の問題から、エンジェルの投資機会を眼の前で理屈をつけられ拒否するように誘導された経験もあるが、その話をしたらそれは投資家としてどうかと思うと言われた。普通にそういう事があるのかなと思ったら、それは異常な出来事だったようだ。
しかし、もうそんな事もどうでもいいのではないか、そんな所に期待している私が馬鹿なだけで、私のことを理解してくれる人はいるのだからそういう人としっかりやれば良いのではないか、そういうことだと思う。もちろん、目の前に起こったことはすべて乗り越えてきたわけだから、自分としては強くなったので、そういう時期だったんだろうと思うことにしているが、それにしても失った時間という代償は大きい。
つまり、私が言いたいのは、これから出てくる子達が、一見分けのわからないものをやるに当たって、硬直思考で初期資金が成立しなかった、というのは本当に辛い話でそういうムダな不幸を減らしたいという思いから言っているだけで、僕自身がどうこうという話ではない。
わけがわからないから投資が成立するわけで、わけがわかるなら政策金融公庫で十分。つまり、投資が必要な所に投資が回らず、投資が必要ないのにマネーゲームになっている側面がある。
だから、私は起業することに否定的になった。覚悟もないのに連れ込まれるようになるなと、若者に言った。捨てられたら傷にしかならないからだ。こないだ話した子は会社が潰れたからバイトをしていると言った。新卒で入った会社が潰れたのかと思ったら、起業家でしたと言っていた。自分の会社が潰れたのだ。
いくら自己責任だと言っても、サラリーマンと違って起業家にセーフティネットはない。それは去年一昨年でよく分かっている自分がいる。国も自治体も、NPOも助けてはくれない。もっといえばホームレスすら排他してくるのだから、生きるということはとても大変なことなんだと改めて思った。僕はこの日本でそんな貴重な経験ができている稀有な存在なんだと、思うことにした。そんなゴミ溜めの中から這い上がってきたが、出来ることならそんなことになってほしくはない。だから、僕にはもうプライドは一切ない。
すでに、相当の人に迷惑をかけている。自分の力のなさが全て悪いのだが、そういう世界で本当に良いのか、と思う。