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コンテンツの「消費財」と「耐久財」はどこで分かれるのか
コンテンツは消費財である。と思っている人が非常に多い。
特にブログ記事を書いて一瞬で燃え尽くして再帰性ない場合を体験している人などはこの傾向にある。バラエティ番組などもこの傾向が強いし、ニュース番組も「News」である限り速報性が重要で、消費コンテンツだ。 この消費コンテンツを作ってしまうと、燃料としてのコンテンツを投下し続けないと場に人が集まらない結果になる。
そのため、Newsは常に驚きに満ちた、深い悲しみに満ちた、あらゆる意味でショッキングな情報を提供し続けないと死んでしまう。そうすると、より過激な情報を提供する必要が出てきてしまう。 人は考えることを拒否しない。その反対に、情報を提供し考えさせ論考するような記事は常に再帰性を生む。答えがない場というのは人を繰り返し引きつける。
それは物語についても同じだ。答えのある物語はスッキリ終わるが一度見てしまえば満足してしまう。しかし、何かモヤッとしたものが残る結末だったり、スッキリはしたものの主人公はすっきりしない場合はそうだ。
例を挙げると、スター・ウォーズのエピソード6もエピソード3も主人公は報われていない。エピソード6はルーク・スカイウォーカーが父ダース・ベイダーの死を見届け光と闇のフォースを両方とも所持しており、反乱軍の勝利を単純には喜べない精神になっているようにも表情からは見て伺える。
エピソード3も主人公が負けるという、アリストテレースの詩学的に悲劇はより優れた人間の転落劇であるのでこれも正しい。逆にエピソード4〜6は喜劇はより劣った人間を表現するとあるので非常に正しい。
そして、これを神話理論的に当てはめると、一幕(始め)、二幕(中間)、三幕(終わり)且つ、一幕、二幕が喜劇のように見せつつも、三幕が悲劇の傾向を持つのは当然と言える。主人公は二幕までにある程度完成されているからだ。ともに三幕(エピソード6,3)のはじめに超絶な力を身に着けている。
ここに、StoryAIに実装しているプロットグラフのシークバーの意味が出てくる。ストーリーグラフとエートス(キャラ)グラフは互いに反比例するという仮説を上げているし、エートスの心理グラフは多分あまり言及されていない。これは因果と表現もできるが、シド・フィールドが言う、シーンとシークエルの相関に近い。
互いに影響しあっているためそれらを本質的には回収しあわなければならないのだが、これを放り投げてしまうのが駄作であり、意図的に放置して次の話で回収するのが良作である。謎は謎のまま引っ張るのだ。
つまりは、情報は100あれば3ぐらいを見せながらちょっとづつ進行させて、すべての話が終わった段階でも8割程度でとどめておかなければ駄目ということだ。つまり、謎は残しつつも答えは手元にあればいい。それだけプロットの価値は大きい。
答えは出してはいけない
もう一つ説明すると、エヴァンゲリオンもシン・ゴジラもこの引きがうまい。若い時はぶん投げだという論調に引っ張られたが、むしろ考える余地がある方が、ずっと興味を持ち続けるし、20年たっても話題になる。
そう考えると、「君の名は。」究極の消費財コンテンツだといえる。
だが、同じ規模でジブリは「千と千尋の神隠し」を耐久財コンテンツに仕上げている。この差は何なのだろうか、絵の美麗さなのだろうか、映画館で見たという体験なのだろうか、強烈なストーリーだったのだろうか。
答えは「すべて」、なのだが私はやはりストーリーなんだろうと思っている。別に千尋は美少女設定でもないどこにでもいる女の子だ。それよりも脇役たちが強烈な個性を放つ。この話は典型的な英雄譚なので、喜劇であり千尋の精神性の高まりを表現しているのだが、この作品もすべてを語っていないハイコンテキストな作品だ。
だが、キチンと話は終わっているし、父と母を助けるというReturn with the Elixirも達成している。だれも傷つかない。風の谷のナウシカやラピュタとの決定的な違いはここだった。
だが、ナウシカと千と千尋の共通項があるとしたら、それは映画だけでは世界の成り立ちが語られていないための大義としての謎があること、細かい設定の謎がわかりづらいので、何度も見なければわからないし、何度も見ても議論になってしまうという部分にある。(ナウシカは漫画読めばだいたい分かるが)
これはガンダムにも取られた手法で、ようやくオリジンを読むことでネタバレを35年ぶりにやった感じだが、始まりの物語にはある程度の行間が必要なのだと思う。
そう思うと古典SFは非常に良く出来ているとお思う。スタートレックはそうやって世界を作っていった。語らないことで語らせるというのが耐久財としてのコンテンツなのだろうと思う。
飽きさせないための仕掛け
消費財としてのコンテンツは究極的にはネタバレであり、知ってしまえばな~んだで終わる。リターニングユーザーが生まれることはない。例えば、我々の作品で言えば、「シン・ヘンゼルとグレーテル」はリターニングユーザーも多く、小学生にも人気がある。この話は理不尽の塊だ。
ソウダミクさんのアイディアを私が形にし、再度ソウダさんが絵にしてくれたものだが、そもそもそこで「え?恨んでたの?」というわけの分からない展開になる。台詞を書いた私もなぜそうなるのかは理解できないが、キレる子どもたちという定義なら成立するかもぐらいで、このまま押し通した。
また、ラストは衝撃的なわけだが、これも神話理論どおりの展開だし、Return with the Elixirも達成している。報酬シーンもきちんと得ているし、神話理論通りだ。
アリストテレースの流れ通りだが、これは喜劇なのか悲劇なのかというと、途中で「転」が入ってしまっていて、話がつながらないという手法を使ってしまったので、読者が置いて行かれている。しかし、リターニングユーザーがいるのなら、これも正解の一つなのだろう。
つまり、耐久財としてのコンテンツは究極的には飽きさせない、次を期待させるということにつきるのだが、読者にそれがすけて見せてはいけない。
だから、映像をリッチに仕様が、役者がリッチだろうが、ストーリーを作る人が名のある人だろうが関係なく、その世界をどれだけ作り込んだか、今回公開する範囲がどれぐらい深くて小さくて、でも世界に影響が及ぼせるのかに尽きるのではないのだろうか。
いわゆる世界系が流行った理由もそこにあるのだろうし、異世界転生ものが流行ったのもそういうことなんだろうが、流行っているから書いたでは、ただのデッドコピーにしかならない。それならば、ラヴ・クラフトの世界のように世界の創成に全員が関わったほうがいい。StoryAIではこれが出来るIden(アイデン=遺伝)を実装する予定だ。
カラカラの喉に旨味成分を
とにかく現代人は、情報の洪水の中にてたらふく飲んでいすぎて、常にのどが渇いているが満足はしない。だが、そこに料理で言えば目には見えない「旨味」が加わることで、飽きずに食べることが出来る。そして、毎回違う調整を加えることで、消費財も耐久財に変わっていく。
これは土曜日の情報番組のような存在だ。王様のブランチも踊るさんま御殿もそういう作りをテンプレート化しても飽きずに続けていられる。ドーピングではない共生関係、共犯関係をどこまで続けられるのか、そこには作り手と演者と消費者には決定的な断絶したコミュニケーションがやはりあるべきだと思う。
決定的な断絶したコミュニケーションとは、つながっているようでつながっていないという、いわゆる「カリスマ」のことである。私は確実にそこに「ある」し、各自のソーシャル上にも心のなかにも確実に「いる」のは知覚できるし、対話も出来るのだが、隣にはいない状態が重要なのだ。
コンピュータで言えば全二重通信ではなく半二重通信である。ブロードキャストの先である。だから地下アイドルが地下アイドルたらしめるのは顧客との距離が近すぎて「カリスマ」になりきれない。
逆に浜崎あゆみの様に、近いようで凄まじく遠いところにいる人は飽きられてしまうのが現代である。安室奈美恵はストイックなまでに芸能人であり、その更に逆を突いてうまく行っているようにみえるのが叶姉妹ではあるが、それはまた違う話である。
紀元前2300年の知見を現代に
最初の話に戻るが、ショッキングな情報を与え続ける必要があると言ったが、バズを生むのか炎上を生むのか、ムーブメントを起こすのかと言うものがあるが、こういったコンテンツを引きつけるためには地道なファン獲得が重要だ。
そして、爆発ポイントが見えてきたときで面を取りに行く時に初めて力学の応用が必要だ。その話とコンテンツの質の話はまた別であり、コンテンツの質が伴って初めて力学の応用が効くのだと思っている。これを私はホリゾンタルとバーティカルの組み合わせと呼んでいる。ここらへんのクリエイター向けの機能もアップデートしていく事を考えている。
最後に言えるのは、StoryAIをよりよくサービスアップデートしていくのだが、アリストテレースは非常に私に新しい知識と経験をインストールしてくれる偉大な人だということだ。約2400年前の知見が私を強化してくれると思うと、書籍の持つ本質的なパワーとユダヤの教えの偉大さを感じる。
巨大な構造論の話を理解していく課程で、私の入り口はジョセフ・キャンベルの神話理論だったわけだが、紀元前の考え方、そしてウラジミール・プロップやレヴィ=ストロースのような構造主義者たちの深い洞察から始まる、物語構造論のシステム化は非常に楽しいものだ。
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上記のようなコンテンツ状態をグラフで把握し、チーム内で共有することで、コンテンツの中身をリリース前にPDCAで改訂していく事が出来ます。
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