よく、あなたはいったい何がしたいんですか?と聞かれます。 ...
最初から儲かる仕事を選ぶべきか
たぶん、起業した人は沢山悩んだと思います。そういう私も、とても悩みました。事業は最初から上手くいくことなど無いわけで、上手く行っている人ばかりがクローズアップされるので、起業って楽しいのかなとか、簡単なのかなと?と誤認されているような気がします。
実際はたまたま上手く行った人がクローズアップされているだけで、そういった失敗は言葉で語られるのみで相当に辛い現実がそこにあったのだと思います。実際に、SmartHR社は色んな所で書いている通り4回事業をピポットしていますし、コインチェック社もその前はStory.jpを運営していました。
儲からない時期を過ごすのか、最初から自分の経験の延長でやるのか、とても難しい判断ですが、どちらのほうがよりよい結果を得られるのでしょうか?
では、最初は儲かる仕事を選ぶべきなのでしょうか?
儲かる仕事を選ぶ
サラリーマン時代からの経験則の延長でやる事が多いと思います。30代の起業家が選ぶ道が多いかと思います。もしくは、大学の研究の延長かもしれないです。(いわゆる原体験というやつです) もっと言えば、すでにアメリカや中国で流行っていて、それのタイムマシーン経営をするのかもしれません。
これは手っ取り早いですし、最近のベンチャーキャピタルや政策金融公庫が入れるパターンです。しかし、日本は人口ボーナスもバブルもないので、このイシューだと、アップサイドの限界が見えます。また、あくまで日本の課題を解決することに主眼が置かれてしまいます。
最初は儲からない事業
いわゆるAirBnB系というか、よくわからん系です。とりあえず数字作ってこいよと言われるやつです。波を起こすのも自分、お金を稼ぐのも自分、なんでも最初からPMFまで全部自分という、一見無理ゲーなやつです。しかし、ネットワーク効果が高く、且つユニークなので一見真似が容易でも、先行者利益が大きく、いわゆるUXがすべてを決めるため、期間が長ければ長いほど、もっと言えば始めるタイミングが早ければ早いほど勝つというものです。
いわゆるザ・ベンチャーというタイプの事業です。
実は、日本の大企業もほとんどがこのタイプだと思います。最初は、誰も見向きもしなかった事業を粛々とやっていった結果、大成長を遂げて、世界でもオンリーワンになった、その様な企業が多いと思います。つまり、短期利益を追い求めず、中々大変かもしれないけれどもコストを最小にして、顧客が使える商品をとにかく生み出し、その利益で次の商品を作り顧客を開拓していく、こういう流れが良いのではないか、と思います。
ここで大事なのはメディアが作った一過性のブームに乗らないこと。自分を信じてくれた顧客のために徹底して武器を磨くこと、それに尽きるでしょうあ。これは先日札幌であったBDashCAMPでも、明石ガクトさんがタピオカというキーワードで話されていましたが、自分がタピオカかどうか冷静に客観的に見る必要があります。
また、私が昨年から今年の3月まで通っていた脚本家講座の最終日に言われた「15年沈んでいた脚本家は15年持つ」ということも一つにあるでしょう。評価されづらいことは、いずれ大きく花開く時が来る、そして、その期間が長くなればなるほど、その後の刈り取りが長期間になる、そういうことだと思います。
バブルというのは、こういった下積みというか、短期間で儲けることばかりに終止して、本質的な成長、国力を底上げする成長が何かを考えていないのではないか、と考えます。
ちなみに、私がエンターテックをやるのは、日本はコンテンツ大国であり、もっと効率化出来ると思っているからです。コンテンツは輸出できるものであるからです。実際に、大手エンタメ企業のグローバル比率は7割を超えており、20年で十分に海外のファンを作ることは出来るということはよくわかりますが、ほとんどの日本企業はグローバルイシュー化せず、国内消費を第一にしており、グローバルイシューとして考え直した時、コンテンツそのものを客観的に分析するという点がとても大事だと私は思いました。
つまり、StoryAIのあり方は、クリエイティブツールのクリエイターがより作りやすくというイシュードリブンというよりは、より多くの人により長く楽しんでもらうためにあると行っても過言ではないでしょう。それがクリエイティブツールとのおおきな違いです。もう一つは客観的分析が入ることにより、無駄な手戻りが最初から防げるはずという点が挙げられます。殆どの作業がブラック化するのは、分量が多いことと手戻りが多いからです。最近だとそうではない所が増えてはいるようですが、広告業界などでも映像が増えてくるため、企画段階から評価の仕組みを入れ込むことで、無駄な作業が減るということがあると私は考えています。
そこが上手く伝わらなかったなというのが、私の説明不足というのもあって力不足なところなんですが、これもあともう少しで説明がつくことになると信じています。
そして、日本のコンテンツは十分にグローバルイシューかつ、コンテンツ評価はグローバル標準なのでイシューになりうると考えています。
ドライに経営だけを見ていれば、儲からないことをすることは悪なのかもしれませんが、これが人生であるならば、もがくことは悪いことではありません。そういった期間に人も会社もあらゆる意味で成長するわけですから、生き残ることこそがとても大事なのです。
海外のお金が入らない
ところで、なぜソフトバンクヴィジョンファンド含めて、世界のVCからほとんどマネーが入ってこないのでしょうか。それは、一つに日本のイシューは役に立たないと思われる傾向が強いそうです。日本独自の課題だからというのが挙げられるようです。とはいえ、ウォシュレットを開発したら、グローバルイシューになるというのもあるので、トレードオフだと思いますが、時期的にもっとあとだということです。それは、日本の人口分布に問題があります。
沢山の良いベンチャー(誰にとって良いのかはさておき)が生まれている一方、グローバル化が遅れる可能性もあります。これは今に始まったことではないのですが、それに拍車を掛けている可能性はあります。よく外国に支社を作っている企業さんがいて、開発拠点ならまだしも営業拠点になっていて成長が薄いという場合があります。結局、それは日本から輸出したいからというときに、すでに大企業では過去の反省から国ごとにローカライズしている事で海外比率が安定化しています。
リスクのとり方
これは私見ですが、政策金融公庫とVCが同じ方向を向いている意味があるのかは疑問です。借り入れ=リスクを取らないため過去の実績ベースのところに低利で貸す、投資=その発想が面白く本人がやりきると思う所に掛けるためリスクを自らとって上がりを沢山もらうというのが本質であり、ローリスクハイリターンはわかりますが、LPもいるのでハイリスク・ハイリターンはむりでも、ミドルリスク・ミドルリターンがベターかと思います。ここでいうミドルリスク・ミドルリターンを数値化しなければ意味がありませんが、実は起業家だけがハイリスク・ハイリターンをとっている可能性も高く、好き勝手にやっているなら好きにすれば、というよりもリスクマネーならばもっと多様性があってもよいのではないかと考えるわけです。
つまり、資金の流動性がとても低いことが問題であり、3000億台を突破しそうな資金ですが、少なくとも5000億円台まで底上げし、1社に固まるのではなく、名前のある会社・個人にだけ投資するのではなく、広く裾野を広げていくべきなのではないかと考えます。実際のところ、政策金融公庫が海外のリスクマネーに近いところを貸し付けている感じではありますが、貸付であるため返済義務がつきまとい、どこか収支計算が必要ですし、資本制ローンも条件はシリーズAなどを担保(ぽく見せて)に貸し出すという形が多く、結局はリスクではありません。昭和のバブル崩壊後、不良債権が大量に出たせいで、全く金融機関がリスクを取らなくなった事が原因ですが、それならばとVC側がもう少しリスクを取れば良いのではないかと思います。 というか、極論言えば、創業者がやりきろうとする限りは潰れないわけで、逃げずにやりきるのかどうかそこを見ればよいのではないか、と私は思うのです。
結局そういう人間に対して、手を差し伸べるのは、大手の事業会社か身近な個人だということで、甘えるわけではありませんが、リスクマネーとは一体何なんでしょうかと、とても考えた数年間でした。結局の所、ビジネスだから儲かると思わせない限りは無理だと、そういうことなんでしょう。
しかし、一時期もてはやされたサービスや起業家がしぼんでいった数は枚挙に暇がありません。もっと言えば、ITは世界を完全には救えないというのも、私は3.11のときに痛感しました。電気がなければ、通信が途絶えれば何も出来ないのです。これらは、海外のベンチャーがSVFなどと一緒に解決の方向(宇宙通信や高高度からの無線)に向かっていますが、やはり、日本だから出来ることに集中してもよいのではないか、と思うのです。
汎用的にマルチに戦いを挑む必要など無いわけで、専門特化型の方が生き残る道はあると思います。