どうしてピーター・パンは大人にならないの?

ピーター・パンが永遠の少年というのは誰もが知っています。でも、どうして大人にならないのでしょう?

(ウェンディたちの家の養子になることを断ったピーター・パン:梅木夕夏・画「ピーター・パン」

ネバーランドでも大人になる!

永遠の少年ピーター・パンが住んでいる夢の島ネバーランド。そこには、「迷子たち(ロスト・ボーイズ)」と呼ばれる少年たちも住んでいて、ピーターはこの子たちの隊長です。

そこから、ネバーランドは「永遠に子どものままでいられる島」というイメージを持たれがちです。

でも、実はそうではないんです。

ピーター・パンの原作小説には、次のように書いてあります。

〔迷子たちは〕大人になりそうだと、これは規則に反することなので、ピーターに間引かれてしまいます。

(大久保寛訳『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫、95ページ)

つまり、大人になった子は追い出されてしまうから、「迷子たち」はみんな子どもなんです。

だから、ネバーランドに住んでいても、成長はしてしまうのです。

大人にならないという強い意志も必要

原作小説『ピーター・パンとウェンディ』のなかで、ウェンディと出会ったピーター・パンは、家出して妖精たちと暮らすようになった理由を、「大人になりたくないから」と説明しています。

「お父さんとお母さんが話しているのを聞いたからなんだ」ピーターは低い声で説明しました。「ぼくが大人になったら何になるだろうかってね」今やひどく興奮してきました。「ぼくは大人になんかなりたくないんだ」と熱をこめて言いました。「いつまでも子どもでいて、おもしろいことをしていたいんだ。だから、ケンジントン公園に逃げて、長いこと妖精たちと暮らしていたのさ」

(大久保寛訳『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫、56ページ)

さらに、『ピーター・パンとウェンディ』最終章には、ロンドンにやってきたピーターとウェンディのお母さんの次のような会話があります。

お母さんはピーターに、他の男の子たちをみんな養子にしたから、あなたも養子にしたいと話しました。

「ぼくを学校に行かせるんでしょ?」ピーターは抜け目なくききました。「ええ」

「それから、会社に?」

「そうでしょうね」

「そのうち大人にならなくちゃいけないの?」

「近いうちにね」

「ぼくは学校に行って、まじめくさったことなんか勉強したくないんだ」ピーターは激しい口調で言いました。「大人になんかなりたくないんだ。まっぴらさ、ウェンディのお母さん、朝、目を覚ますとひげが生えてるなんて!」

〔中略〕

「近づかないで、奥さん。誰もぼくを捕まえて大人にすることなんかできないんだ」

(大久保寛訳『ピーター・パンとウェンディ』新潮文庫、292~293ページ)

ロンドンに一緒にやってきた迷子たちは、ウェンディの家の養子になるのですが、ピーターはその誘いを、こんなふうにきっぱりと断るのです。

かれは大人を嫌っていますし(物語のはじめで、ウェンディのお母さんと出会った時、歯ぎしりしています)、大人になることをはげしく拒絶しています。

永遠の少年でいるためには、ネバーランドに住むだけでなく、「大人にならない」という強い意志も必要なようです。

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